トラック運転手の残業代請求方法・未払い問題の現状・計算方法
初回公開日:2018年06月29日
更新日:2018年06月29日
記事に記載されている内容は2018年06月29日時点のものです。現在の情報と異なる可能性がありますので、ご了承ください。
また、記事に記載されている情報は自己責任でご活用いただき、本記事の内容に関する事項については、専門家等に相談するようにしてください。
トラック運転手の残業代未払い問題の現状について
トラック運転手の中には、違法に超過労働を強いられたうえに、残業代を払ってもらっていない場合があります。トラック運転手の残業代未払問題について紹介します。
待機時間は休憩時間とカウント
トラック運転手がどんなにまじめに運転しても、待機時間が生じます。待機時間とは、荷物を積む場所に到着しても、荷主の都合で待ち時間が発生することや、物流施設周辺の渋滞により、長時間待たなければならない場合に発生します。
待機時間の多くは、トラック運転手の都合ではなく、荷主側の都合で発生することが多いです。待機時間といっても、都合がつけば直ちに勤務を開始しなくてはいけないので、サラリーマンのランチタイムのように決められた時間ゆっくりできるわけではありません。
2017年7月から、荷主都合による30分以上の待機時間は記録に残すよう義務づけられています。荷主の都合による過酷な労働を削減することを目的としています。
デジタルタコグラフをオフにし労働証拠を残さない
デジタルタコグラフとは、速度や運転時間などを記録する用紙です。運転手の安全運転の傾向を測ることができるため、運転管理をするのにデジタルタコグラフはかかせません。安全運転管理の義務化に伴い、デジタルタコグラフの利用は有効です。
トラック運転手の長時間労働を隠すため、デジタルタコグラフをオフにする場合もあります。労働基準監督所の調査が入ったときに、デジタルタコグラフなど運行記録の提出が求められます。アナログ式のタコグラフであっても記録紙を取り換えて超過労働を隠蔽する企業もあります。
歩合給だから残業代を払わない
どれだけ渋滞などで運送に時間がかかっても、トラック業界は歩合制だからといって残業代を払わない企業もあります。昔ながらの風習なので、トラック運転手も残業代を要求しないことがあります。
トラック運転手と企業の間で、歩合給なので残業代は支払わないという合意があった場合でも、労働基準法にもとづき残業代は支払われます。
また、給与の計算方法が複雑なために、残業代が明確に分かりにくい場合もあります。残業代は歩合給に含まれていると言われる場合もありますが、残業代がいくらか明確にわからない場合は未払いのリスクもあります。
各種手当があるから残業代を払わない
無事故手当などに、残業代が含まれていると言われることもあります。なお、残業代を加味した分が、一律で手当として出る場合もあります。これらトラック運転にかかわる手当を固定給に加味していても、計算してみて時給が最低賃金を下回る場合は違法です。
トラック運転手の残業代請求をする方法は?
トラック運転手の残業代請求は、まず弁護士に依頼しましょう。弁護士依頼から証拠固めまで流れを紹介します。
弁護士に依頼するには
弁護士に依頼するには、トラックなど運送業関連や残業代など労働環境に詳しい弁護士に依頼しましょう。個人で会社に交渉することになると、これまで多くの問題に対応してこなかった会社と一人で対決するのは不利になります。残業の証拠となるデジタルタコグラフなどの開示に応じてもらえない場合もあります。
弁護士に依頼するにはお金が心配という人もいますが、完全に成功報酬という弁護士もいます。残業代請求に成功すれば数百万をも手にできる場合がありますので、相談料など最初に払うお金が心配な人でも大丈夫です。
証拠を確保
なるべく、残業代を請求しようとしていることを悟られないうちに、自分でも証拠確保に動きましょう。デジタルタコグラフのデータをコピーしたり、手書きの運行記録表をコピーしたり、タイムカードの記録も有効です。
デジタルで勤怠管理をしない企業の場合は、トラック運転手自身で手書きで勤務時間を記録しておきます。一分単位で正確に嘘がないように記録します。弁護士から会社に記録を開示するように要求しても、聞き入れない企業も中にはあります。できるだけ証拠を残しておくように自分でも努力しましょう。
トラックの車載カメラの時間をチェックしたり、配送先の荷物の配送時間も証拠になりますので、細かいところまで自分に有利な証拠がないか確認しましょう。
改ざん前に事前回収
悪質な企業の中には、残業代請求にともないデータを開示する前に、データを改善してしまう場合もあります。なるべく頻繁にデータをコピーしたり、トラック運転手自身で手書きの勤務記録を残しておくことが有効です。
データを改ざんしたことが明るみになれば、企業の信頼性が損なわれます。労働時間のデータ改ざんは違法なので、証拠が多ければ刑事事件として追及することもできます。
転職するなら残業代請求を
事前に労働時間がわかるような証拠集めをしておいて、退職と同時に弁護士を通じて残業代請求をすることもできます。転職するなら、元の企業に足を踏み入れることもないので、最後に残業代請求をしておきましょう。弁護士に依頼すれば、話合いは弁護士と企業だけですみます。裁判になったとしても、自分だけが裁判所に赴くわけではありません。
残業代請求したことがわかれば、転職先で不利になると考える人もいるでしょう。前の会社から転職先に、残業代請求についての情報を話すことはほとんどありません。残業代請求されたことが公になると、他の社員からも残業代を請求されることが懸念されるためです。また、残業未払いは社会的なマイナスな情報なので、自ら情報を広めることは少ないと言って良いでしょう。
トラック運転手の残業代計算方法を紹介
残業代の計算方法を紹介します。給料体系によって、計算方法は異なります。
固定給
トラック運転手で固定給が採用されている場合は、月給を時給に換算して割増賃金率をかけることで正しい残業代を計算することができます。 割増賃金率とは、法定労働時間を超える場合は1.25、深夜残業をした場合は1.25、休日出勤をした場合は1.35と決まっています。
所定労働時間160時間に対する固定給が20万円の場合に、200時間働いた場合を例に出して説明します。20万円÷160時間で時給は、1250円となります。残業代の時給は、1250円×1.25で約1560円です。40時間残業した場合は、(1560-1250)×40で12400円が残業代となります。
歩合給
トラック運転手で歩合給が採用されている場合は、実際に働いた時間で歩合給を割って時給に換算します。 割増賃金率をかけることで正しい残業代を計算することができます。
実際に働いた時間200時間に対する歩合給が20万円の場合で、そのうちに30時間が残業時間だった場合を例に出します。20万円÷200時間で時給は1000円となります。残業代の割り増し分は、1000円×0.25で250円です。30時間残業した場合は、250×30で7500円が残業代となります。
いつまで残業代をさかのぼって請求できるか
トラック運転手に限らず、残業代の請求は2年にわたってできます。2年分の証拠を集めることは難しい場合が多いですが、一、二ヶ月程度では証拠としては心細いです。少なくとも三か月以上は勤務時間や給料にあたる証拠を揃えましょう。
迷っているうちに、残業代を請求できる時効になってしまいます。すでに転職したあとであれば、弁護士に一刻も早く相談し時効を止める手続きをしましょう。
トラック運転手に関する労働ルールを紹介
トラック運転手の労働ルールに関しては、トラック協会のマニュアルなどに記載されています。
連続運転時間と休憩時間
トラック運転手は最大で4時間の連続運転をするごとに、30分間の休憩時間をとることが義務つけられています。4時間でなくても、2時間ごとに休憩をとっても大丈夫です。極端にいうと、トラック運転手は、4時間30分の時間を休憩と運転にわけて働くことになります。また、休憩時間は少なくとも10分以上であることが定められています。
休憩時間と休息時間の違い
トラック運転手の休憩時間と休息時間は意味が異なります。トラック運転手の毎日は拘束時間と休息時間に分けられます。拘束時間とは始業から修業までの時間です。拘束時間中の休憩が、休憩時間と言われます。一日の拘束時間は13時間が基本とされ、多くとも14時間が限度とされています。休息時間とは、運転手にとっては完全に自由な時間です。荷待ち時間などは休息時間ではありません。
トラック運転手が残業代未払いを避けるには
トラック運転手が残業代未払いに合わないためには、ブラック企業を見極めないといけません。ブラック企業を見極めるコツを紹介します。
ブラック企業を見極める
ブラック企業は、運転手を過酷な環境で長時間働かせていることが多いです。車両数が少なく、少ない運転手で切り盛りしていないかチェックしましょう。
運転手が少ないと、人が不足したときにカバーすべく長時間労働となる場合があります。少ない車両では利益に限界があるので、古い車両を使っている場合もあります。トラック運転手にとっては大事な安全装置も、古い車両では装備されていないこともあります。
面接時の環境や口コミでブラック企業をチェック!
面接時の環境で所内の様子を見ましょう。また、求人票でも見なし残業○○時間に対して残業手当がいくらと書かれていた場合は、それだけ残業が多いこと前提に考えます。
求人票がいつ出されたかも重要です。ブラックで人気がなくて求人が集まらない可能性もあります。離職が多い会社であれば、常に求人票を出している場合もあります。
さらに、労働基準法のもと書類送検された企業は、厚生労働省が資料を公表しています。それらを参考にしてみるのも良いでしょう。
トラック運転は過酷な仕事だからこそ残業代は重要!
トラック運転手は過酷な仕事ですが、残業代が支払われていない場合もあります。残業代には時効がありますが、最大2年分までは取り戻すことができます。残業代の請求は運転手一人では難しいことが多いので、弁護士に相談しましょう。
弁護士は成功報酬制度を採用していることが多いので、弁護士費用を心配しなくても大丈夫です。会社と弁護士の相談のみで裁判をおこさず解決する場合もあります。転職するのであれば、もう元の会社に行く必要もないので、退職と同時に残業代を請求することもできます。
会社によっては、証拠を開示しなかったり、データ改ざんしたり悪質な会社もあります。トラックの車載カメラや運転手手書きの業務日記が証拠として認められることもあります。残業代に疑問を感じたら、勤怠情報のコピーをしておくことや、自分でも記録を付けるように心がけましょう。
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